過多月経や生理痛でお悩みの方には、ミレーナ（子宮内黄体ホルモン子宮内放出システム）の装着をお勧めします。もちろん生理不順・生理痛に効くというメリットもありますが、ピルよりも高い避妊効果があるという点も注目されています。
ミレーナとは
子宮内に挿入して使う器具で、通称「リング」と呼ばれることもあります。アルファベットの「T」のような形をしていて、柔らかいプラスチックでできています。
大きさは32mmぐらいで、T字型の縦の部分に黄体ホルモンの成分が付いています。日本では2007年に、子宮内避妊器具として発売が開始されました。
一度入れるだけで、高い避妊効果と持続期間（最長5年）が得られることから、現在行われている避妊方法の中でも、一番コストパフォーマンスが高い方法だと言えます。ピルと違って、飲み忘れることも血栓症のリスクもありません。妊娠希望の際は、ミレーナを抜き取ると挿入前の状態に戻すようにします。
今まで避妊目的で使用されてきた器具ですが、近年、重い生理痛や過多月経（通常より生理の量が多くなる）といったトラブルの改善にも有効だと認められるようになりました。
そのため2014年から、月経困難症や過多月経の治療として用いる場合は、保険適用で挿入できるようになりました。
ミレーナをお勧めする方
- 生理痛が重い（月経困難症）
- 過多月経がみられる（経血量が多い）
- 経膣分娩の経験がある方
- 妊娠を希望していない方
- 次の出産まで、期間を設けたい方
- ピルが服用できない方（高血圧症の方、ピルを飲んで副作用が出た方、血栓症のリスクがある30代後半～40歳以上の方、BMIが30以上の方、喫煙者など）
挿入の流れ
1ご予約
当院は完全予約制ですので、お電話またはWebサイトからご予約ください。土日祝でも診療しています。
2ご来院・問診
到着しましたら受付までお越しください。受付が終わった後は、問診票（最終月経、性交経験・妊娠・出産経験の有無、既往歴など）への入力をお願いしています。
3検査・挿入
問診を行ってから、ミレーナについて説明していきます。子宮や卵巣の疾患があるかどうかを確かめる必要があるため、子宮頸がん検診や超音波検査、性感染症の検査を受けて頂いてから、ミレーナを入れていきます。
子宮筋腫や内膜症がある場合は、ミレーナを入れることが出来ない可能性もあるため、予めご了承ください。
4会計・処方
受付で会計を行います。
5定期検診
1ヶ月後、3ヶ月～6ヶ月後、1年後に定期検診を受けて頂いております。
定期健診は、ミレーナの位置を超音波検診で調べ、出血状態を確かめるために行います。
費用
避妊目的の場合は、全額自己負担の扱いになります。月経困難症または過多月経の治療として用いる場合は、保険診療の扱いとなります。不明な点がありましたらお気軽にお問い合わせください。
挿入時期・方法
ミレーナは生理開始日を「月経1日目」として、7日以内に入れていきます。そのため経血量が徐々に減少してくる4～7日目に入れることをお勧めします。
お産後は子宮が回復するまで待ち、回復が確認できましたら入れていきます。お産から3～4ヶ月後を目安に検討してください。ただし、授乳中の方は慎重に挿入を検討する必要があります。お気軽にご相談ください。
ミレーナの挿入は、早い方ですと5分ぐらいで終了します。
挿入後の注意点
挿入当日はお風呂に入らず、シャワーにしてください。
効果
ミレーナには黄体ホルモン（レボノルゲストレル）の成分が入っています。子宮の中に入れると持続的に成分が出続け、子宮の内膜へ働きかけます。
避妊と過多月経・月経困難症といった生理トラブルを緩和させる効果を持っています。
避妊効果
女性の身体は毎月、受精卵を受け入れようと、子宮内膜をクッションのように厚くさせています。
ミレーナから出される黄体ホルモンには、子宮内膜の増殖を抑える効果があります。子宮内膜を薄くするため、受精卵の着床を防いだり子宮入り口の粘液の質を変えたりする効果が得られ、膣内から精子の進入を防ぐことが出来ます。
過多月経・月経困難症の症状解消
黄体ホルモンが持つ子宮内膜の増殖抑制効果によって、子宮内膜が薄くなります。それにより、経血量が減ったり月経痛を軽くさせたりします。
更年期障害の症状にも効きます
閉経を迎える前の時期であるプレ更年期・更年期に起こり得る不調時には、エストロゲンが入っているジェルと一緒に、ミレーナを使うことをおすすめします。ミレーナをHRT（ホルモン補充療法）として利用することも可能です。
メリット
長期間の効果が期待できる
避妊や過多月経・生理痛の症状を落ち着かせるなどといった、低用量ピルやホルモン剤と同じような効果を発揮します。また、1回入れるだけで効果が最長5年も続くという、大きなメリットもあります。
一度装着するだけで済むので、ピルのように飲み忘れる心配もいりません。 年齢によっては、閉経（50～51歳頃）を迎えるまでの間、5年に1度の頻度で交換した方が良い場合もあります。
高いコストパフォーマンス
薬代を支払い続ける必要が無くなるため、低容量ピルやホルモン剤を5年間飲み続けた場合よりも安くなります。
ピルの服用が難しい方でも使える
40歳以上の方、血栓症のリスクが高い方、喫煙している(1日タバコを15本以上吸う)方、高血圧の方、BMIの数値が30以上の方など、低用量ピルを服用することが出来ない方でも、ミレーナを使うことは可能です。
副作用
入れてからの数日間、以下のような副作用が起こる可能性があります。
- 下腹痛
- 生理の出血
- 月経周期がズレる
- 過長月経（月経が8日以上になる）
- 腰痛
症状が治まらない、痛みが重い場合は放置せずにご相談ください。
ミレーナを入れた女性の多くが経験するトラブルとしては、月経時期以外の不正出血が挙げられます。経血量の減少や、生理痛の緩和といった効果は得られますが、子宮の中が濃い黄体ホルモンに慣れるまでの3～4ヶ月間は、毎日不正出血が起こる場合もあります。
不正出血が続く期間は個人によって異なり、1ヶ月ぐらいで治ってしまう方もいれば、6ヶ月ほど不正出血が続く方もいます。5年のうち初めの数ヶ月間は、不正出血が起こると思ってください。
また、確率は極めて低いのですが、ミレーナが外へ出てしまうことがあります。入れた後でも定期的に検査を受け、ミレーナの位置を確かめましょう。
挿入後の検診
ミレーナを入れてから約1～2ヶ月経った後、ミレーナの位置を超音波検査で確かめていきます。その後、3ヶ月～半年の期間を空けてから、位置の確認をまた行っていきます。
特に問題が無くても1年に一度は、ミレーナの定期検査も受けていきましょう。
ミレーナとピルの違い
ミレーナ
- 子宮そのものに薬が効く
- 卵巣の働きに変化は起きず、排卵される
- 喫煙や薬の影響を気にせずに使用できる
- 体調の変化が少ない
ピル
- 身体全体に薬が効く
- 排卵が起こらなくなる
- 喫煙や他の薬の影響を受けるため、服用が難しい方もいる
ピル（卵胞ホルモンと黄体ホルモンの合剤）と異なり、黄体ホルモンのみが含まれていることから、血栓症の発症リスクは上昇しません。
このメリットにより血栓症のリスクを抱えていてピルの服用が難しい方・処方に注意しなければならない方でも、ミレーナは推奨できます。
よくある質問
ミレーナの挿入は痛いですか。
経膣分娩を行ったことが無いと、挿入が難しかったり、挿入時に多少の痛みが伴ったりする可能性があります。
ミレーナの避妊効果はどれくらい高いのですか。
避妊効果は100％だと言いきれませんが、ミレーナを正しい位置に入れた場合、1年間に妊娠する確率はたったの0.2％になります。また、装着してからすぐに、避妊効果を得ることが出来ます。ただし性感染症の予防効果は得られないため、性交渉をする際は、感染予防としてコンドームなども使いましょう。
ミレーナを入れた後、いつから性交渉できるようになりますか？また、性交時における影響はありますか。
挿入後から1週間ほどの間は、性交渉を行わず、いったん様子を見てください。挿入後の状態によっては、しばらく控えていただく必要があります。詳しいことは挿入後にてご相談ください。また、ミレーナを入れたことで、性交時に影響が生じることはありません。性交時に違和感が生じた場合は、正しい位置に装着できていない可能性が高いです。その場合は受診してください。
